私が経験したカンボジアでの詐欺

 あまり書きたくない話ですが、私が以前プノンペンで合った詐欺について書こうと思います。ちょうど休日でぼけーっと歩道を歩き、警戒心がかなり緩くなっている時に、40代前後のトゥクトゥクのドライバーに声をかけられました。

 

ドライバー:「よう!日本人か。俺は日本に行ったことあるんだよ。実は俺の祖父が日本人でさ、日本のことについてよく話をきいたんだ。見た目日本人ぽいだろ?笑 そうだ、俺の名前はソリー(仮名)だよろしくな。実は妹が日本の大学に行くそうなんだが、日本のこと少し教えてやってくれないか?」

 

と、ソリーがおもむろにポケットに入っている携帯電話を取り出し、妹と思われる人物と電話し始めた。ソリーとは英語の会話だったが、妹のチェンダー(仮名)は少し日本語が通じるよう。ソリーの携帯を渡されチェンダーと話す。

 

チェンダー:「来月に早稲田大学に留学するんだけど日本の状況について教えてくれないかしら。もし時間があったら私の家に来て話さない?」

 

カンボジアに悪印象を抱いていなかった私は、カンボジア人の女性と知り合うきっかけができ、日本に興味を持ってくれている人が私を家に招待したいといっていることに非常に舞い上がってしまい、何の疑いもなくソリーのバイクの後ろに乗っかって彼らの家に向かった。

 

家に着くと、促されるままロビーへ行きソファーへ座るよう進められる。数分経つとなにやらいろいろ料理が運ばれてきて、カンボジア人からすれば非常に豪勢な料理がテーブルの上に並んだ。

 

ソリー:「さあ 食べてくれ 今日は日本人が我が家に来たから盛大に祝いたい気分だ。君は私の友人だ。遠慮することはないどんどん食べてくれ」

 

するとロビーの奥にある寝室から白髪で初老のじいさんが出てきた。

ソリー:「紹介する。俺のおじのソピーだ、ここで一緒に暮らしている。おじさんは長年カジノで働いていた腕利きのバンカーだ。」

 

ソピーは私が日本人と分かるや否や熱い抱擁をしてきた。この時点でおかしいと思うべきなのだろうが、カンボジア人は他人をもてなすのが好きなんだなーと私は能天気に考えてた。

 

するとソピーがプノンペンにあるとあるホテルで長年カジノのバンカーとして活躍したことを語ってくれれた。彼曰く、バンカーの給料はどんなにがんばっても、どんなに優秀であってもあがることはない。だからカジノに遊びにくる客の心理を研究して、いかに目を盗んでいかさまをして一儲けするかを考えてきたと言っていた。一人の客をダシに使い、もうけ話を持ちかけイカサマの手順を教え、協力者(グル)としてイカサマの方法を熟知している女性を客の隣に置き耳元でアドバイスするらしい。そして客に全額賭けさせ、数十分経つと合い言葉をバンカーが言うので、それを聞いた客は賭けるのをやめる。裏でイカサマで儲かった金を山分けして退散ということらしい。

 

テクニックを見せるというので寝室に呼ばれた。当初ここを訪れる目的は、日本の大学に進学する妹のために日本の事情を教えてやってほしいという兄の依頼に応えるものだったが、だんだん話がずれ込んできた。

 

ソピー:「いいか?これは誰にも言うなよ おれが長年賭けて編み出したギャンブルでかつ完全無欠の方法だ。俺が協力したやつはみんな勝つ。バレない。長年このやり方で稼いできた。きみにそのやりかたの一端をお見せする。」

 

いろいろイカサマの方法をみせられて、馬鹿みたいにホーホーとうなずき、いつの間にかゲームの練習までさせられていた。すると突然寝室のドアをあけてチェンダーが入ってきた。美しい女性だと思ったが、場に不釣り合いなほど濃い化粧をしていたので不自然に思った。

 

ソピー:「もし客が来たら彼女をガールフレンドと言え」

 

ん?なんのこっちゃ?と思いながらゲームの練習をしているとなにやらソリーが裏でこそこそ誰かと電話をしている。ソピーが電話をかわり、なにやら話し込んでいる。すると外からノックの音が聞こえる。どうやら友人が来たらしい。ドアを開けて招待された人は、マレーシアの宝石商を名乗る金持ちっぽい身なりをした50代の男。名前はリー おやってるやってるとゲームに乱入してきた。どうやらギャンブルをしにきたらしい。といきなり大金を机の上に積み上げ、賭け金とギャンブルに使うコインをソピーと交換しだした。 

  ??? なにをやってるのか意味不明だった。俺はここにギャンブルをしにきた訳ではない。帰ろうとすると宥められ、まぁまぁと椅子に座らされる。

 

ソピー:「賭け金はおれが出してやる。言う通りにすれば儲かるから 心配するな、もし分からない場合は横にいる彼女がアドバイスする。」

 

どうやら私もギャンブルに参加する運びになったみたいだ。

状況がよく飲み込めないまま賭けをして言われた通りのカードを選び、順調にイカサマで勝ちまくっていた。こんだけ勝てばリーもイカサマだと気づくはずだし、Tシャツ、半パン、サンダルの私が賭けるのに必要な額を持っているとは考えにくいのになぜか、私が勝つとにこやかにyou're luckyと言って私に握手を求めてきた。

時間が経つと賭け額が膨大になり、賭けの総額がおよそ500万円になろうとしていた。すると突然ソリーが机のしたから紙を渡してきた。手持ちの金がないので、リーを信用させるために君の手持ちの金を貸してほしいとのことだった。私は愚かながら了承し500ドルを渡した。そして賭けを再開して指示通りに、ゲームを行った。ソリーの飲み物はいらないか?の合図で賭けをやめることになっているので、リーにそのように伝えたら、賭け額が膨大になっているので、お互いにカードを提示して勝負をつける前に、君が賭けた額の担保を持ってこなければ、この勝負には応じないと言い出してきた。担保の額はおよそ400万円。いま手元になければ、どこかから借りてでも持ってこい。クレジットカードで引き出してこいと要求され、かなりテンパった。

 

ソピーに裏で相談すると、

ソピー:「ただ金をもってくるだけでいい、賭けはこちらが買っているんだ。奴に担保を提示すれば大金が手に入る。なんとか君のクレジットで金を作ってきてくれ」

 

だが400万円は私が現在所持してるクレジットカードの限度額を軽く超えているし、それ以前にゲームのつもりで始めたのにいつの間にか賭けになってしまっていることをなんども問いただしたが、聞く耳を持たない。

 

私が断り続けると、

ソピー:「私も知り合いのつてをたよって金をつくってくるから、君も協力してくれ」

 

それでも断ると

ソピー:「よし分かった。きみは一銭も払わなくていい私がなんとかする。しかしリーは宝石商でボディーガードを雇っている。もし金が作れなかったら我々はもうおしまいだ」と話してきた

 

ここでかなりヤバい状況に陥っていることに気づいた。

かなり動揺していたのを覚えている。 俺の人生終わったわ。 殺されちゃうのかなー 拉致られてぼこぼこで魚の餌かなー なんていう不吉な不安が頭をよぎった。

 

ソピー:「とりあえず金を集めてくるからこのショッピングモールで待っててくれ。金が集まったら君に渡す。そして堂々としてリーを信用させろ そうすれば大金が我々の懐に転がり込む」

 

そういって、ショッピングモールのバーガーショップで4時に待ち合わせをして、気が気じゃない精神状態でそわそわしながら待った。はっきり言ってかなりビビっていた。 

 

しかし4時になっても、5時になっても、6時になっても、待てど暮らせどソピーが一向に戻ってこない。金策に明け暮れているんだろうなと思いながら待ったが、冷静に考えれば今逃げられる状態だ。と思ってトゥクトゥクにのってそのままホテルに帰ってきた。

 

あまりにも突然の出来事で動揺した頭でことの一部始終を整理しながら考えていたが、そもそもリー自身も実はグルで私から大金をせしめるために、イカサマで負ける役を演じて、私が十分なキャッシュを持っていないことを予見し、賭け額を膨大にしてATMから金を引き出させ、なんらかの手段を使って私の金を強奪するつもりだったんだろうと思った。結局クレジットで金を引き出すことをなかなか了承しない私をあきらめて、ショッピングモールに置き去りにしたんでしょう。

 

 

 一時的に貸してくれと言われた500ドルは結局戻っては来なかったが、いい勉強になった。

 

かなり手の込んだ詐欺だったなー もうこんな目には遭いたくない

 

 皆さんもプノンペンを観光する際に話しかけられることが会っても警戒心を絶対に緩めないでください。特に日本人は目立ちますし、よく話しかけられます。日本とは違うということをよく認識して行動することが重要です。