カンボジアの少女売春市場 ”純潔取引” の実態

 ダネットは14歳。プノンペンの郊外の貧しいコミュニティにある彼女の家は家と呼べるか分からないほど粗末な住まいだ。家の基礎部分は多少段差がある構造で高床式になっているが、基本的に壁がなく雨風をしのぐ屋根のかわりにブルーシートを代用している。要はテント暮らし。彼女はそこで11人の家族とともに暮らしている。家の近くにある池は不衛生で様々な病気を媒介した蚊が大量に寄生している。
 ダネットはおとぎ話を読むのが好きだ。だが、本を読んでいる彼女の目は死んでいて、表情も硬い。

 10歳の時 彼女は、小児性愛を持つイギリス人の男に、ゲストハウスの一室に数日に渡って監禁された。彼女の母親は生活費を苦にとうとう実の娘を一週間750ドルでその男に売っていたのだ。悲しい話だが、少女の純潔な体は多くの小児性愛者を魅了している、少女を買うためにわざわざ東南アジアに足を運ぶ小児性愛者が後を絶たないのは想像に難くないだろう。我々が持つ一般感覚からすれば普通でない事は確かだ。これは少女の両親と少女を買う男の間でかわされた売春取引であり、許しがたい性犯罪者によるレイプ行為だ。
 ダネットを買ったイギリス人の男は当時年齢54歳、元カンボジア政府のアドバイザーで今回の少女売春によって、懲役12年の判決をカンボジア政府から下されている。彼女は”彼はとても体格が大きく冷淡な顔つきだった。彼の言動や行動が少しおかしかった。永遠に刑務所に入っていてほしい”と話す。
 何も知らない無垢な少女の純潔は9人の子供を食べさせていくお金と借金の返済のために売られたのである。 ダネットの父親はバイクタクシーとフルーツの小売りを営んでいるが、両方の稼ぎを合わせても一日5ドル。生活費と借金返済におわれ困り果てた彼女の母親は未成年の売春を仲介する、表向きはタクシーのドライバーのブローカーに接触し売春の話をもちかけた。「お母さんは私をそこ(ブローカがいる場所)につれいった。次の日お父さんがそこにバイクで送ってくれた。私は行きたくなかったの。だけど家族のためだから。」
  彼女の父親と母親は売春者と接触するため途中までダネットに付き添った。
「最初男の人に会った時何を言っているのか全然分からなかった。でも身振り手振りで話してきてどうやら私に服を脱げと言っているみたいだった。私はお母さんを恨まない。私も家族も貧しいし借金があるから…だから私は少しでも役に立ちたかった。」

彼女の父親は泣きながら「もうこんな事は二度としない。どんなに私たちが貧しくても、たとえ食べるものがなくなって、土を食べるしかなくても、自分の子供を売り飛ばすまねはもう絶対にしない。娘には申し開きが立たない。」と二度子供を売春するようなことはしないと誓った。しかしこの事実はもう取り消せない。この出来事が彼女の心に深い傷を負わせてしまった。 ダネットは「私は悲しい」とつぶやいた。

「 ”純潔取引” 所謂少女売春はプノンペンを中心にブローカーがあちこちで観光客、滞在する外国人に話を持ちかけ取引が行われており、大きな社会問題になっている。通常、”純潔取引”はアジアの富裕層の間で人気で、純潔である少女と性行することは自身に健康と富をもたらすと信じ込む人間が多く、中にはHIVのような病気も治ると信じている輩も存在する」とNGO団体 Les Enfants (APLE)のティム・ホーンは話す。

 少女売春取引の多くは少女達がホステスとして働くカラオケバーや売春宿がしが仕切っている。しかし取引は闇の中で秘密裏に仲介者が蠢いており、貧しい家庭をターゲットに市場をコントロールしている。そのため加害者を立件するための証拠集めは予想以上に困難を極める。またこの国では加害者の足取りを追うための証拠集めに警察官が武装することは法律で禁じられている。

 多くの観光客で賑わうシムリアップで、4ヶ月の捜査の末、元仏教の僧侶である33歳のロンヴェンは偽の英語ランゲージスクールをシムリアップ郊外で運営していたとして訴追された。 彼はインターネット上で孤児を預かり面倒を見ていると訴え寄付金とボランティア募っていたが、実際は全ての生徒達はそのランゲージスクールの周りのコミュニティーで暮らしており両親もいた。ここに在籍していた生徒は60人あまりで、彼はたびたび小児性愛者の訪問を許していた。

男は借家を手配してランゲージスクールの生徒である2人の男児を日帰りの取引で小児性愛者の元へ送った。捜査官の調べで、彼はソーシャルネットワークサービスを使いヨーロッパ圏の小児性愛者の元に10歳以下の少女の売春取引を持ちかけており、インターネット上の取引の容易さが指摘された。カンボジア児童基金青少年保護団体で長年問題に取り組んできたオーストラリア人元捜査官ら2名含む捜査関係者が一同に介し、現地の警察官に証拠の集め方や、犯罪の予感を察知する方法、犯人確保の仕方、職質の掛け方などを訓練した。

 児童福祉施設のオーン・ソファンナラ所長は「カンボジアでは実際のところ、こうした問題を取り締まる制度をコントロールする事が難しい状況がある。たくさんの人間が子供達を育てており、正式に住民登録している者もいればそうでない者もいる。
我々の仕事は子供を守る事であり、こうした犯罪を取り締まる制度や法律を再度見直さなければならないし、取り締まりに支障がでるような法律は排除すべきだろう。しかし、こうした実態を改善するための警察の捜査能力の貧弱さや制度や法律の設置の遅滞などのリソースの不足が解決を送らせている原因だ。」と話している。

 

by  Independent